「ケンズカフェ東京」というお店をご存知でしょうか。
店舗は東京は新宿御苑近くの1店舗のみ、販売する商品も3,000円のガトーショコラ1種類(しかも1サイズのみ)、という一見かわった特徴のあるお店ながら、年商3億円を売り上げるというお店です。
テレビや雑誌でとりあげられたり、最近ではファミリーマートとのコラボにて、その監修商品が販売されたりもしているので、食べたことはなくても名前を聞いたことはある、という方も多いかもしれません。
その「ケンズカフェ東京」のオーナーシェフである「氏家 健治」さんが書いた「余計なことはやめなさい! ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方」という本が、先月に発売となりました。
タイトルを最初に見たときに、ぼくは「余計なことってなんだろう」というのが気になりました。
実際に読んでみましたが、経営者ではない一介のフリーランスのぼくにとっても、なかなか学びがあり、勇気が湧いてきそうな内容になっていましたよ。
依頼されて読んだ本書ではあるんですが、個人的には「読んで良かった!」と思える一冊でした。
今回、「ケンズカフェ東京」さんより依頼をいただき、この記事を書いています。
本書の目次
この本の目次です。(Amazonより)
序 章 忙しすぎて、儲けることをおろそかにしていませんか?
第1章 余計なことをやめるたびに、会社が大きくなった
第2章 余計なことをやめたら、こんなにいいことがあった
第3章 「余計なことをやめる」代わりに、ますます強化すべきこと
第4章 「余計なことのやめ方」にはコツとタイミングがある
第5章 ブランドは、余計なものを捨てた先にある
終 章 人の役に立とう
全221ページ、序章・終章を含むと全7章となっています。
ぼくはわりと本を読むのは遅めだと思っているのですが、わかりやすい言葉で書かれているので、だいたい3時間ほどでサクッと読めました。
「余計なこと」をやめたらうまくいった
本書の内容ですが「余計なことはやめなさい」っていうタイトルでぜんぶ言い切っている気はします。これほどタイトルと中身が一致する本は、最近あまり読んでないんじゃないか、って感じでタイトル通りの本でした。
この本では「余計なこと」とは何か、そしてその「余計なこと」をやめると、どんな良いことがあるか、というのが氏家さんの経験を元に書かれています。
氏家さんは今でこそガトーショコラで成功している方ですが、1998年に創業したイタリアンレストラン「ケンズカフェ」では、なかなかうまく行かず、赤字続きで、倒産まであと一歩という所まで来ていたそうです。
その倒産の危機から、再生を果たすことができたのが「余計なことをやめた」結果だといいます。その具体的な経緯が本書では紹介されています。
ところで、余計なことって、一体何をやめたんでしょうか。
ディナーをやめる
まずはレストランにとって収益の要であるディナーでの通常営業をなくしたそうです。
ディナータイムは、完全受注製の「宴会」だけに絞ることで、食材の廃棄ロスもなく人件費も減らせて、赤字体質から利益を出せるようになったんだとか。
ガトーショコラを通販で販売
夜の営業を「宴会」に絞ってうまくいきはじめた次の一手として注目したのが、料理のデザートに出していたガトーショコラ。
これがお客さんから「持ち帰りたい」と言われるほど人気があったため、ガトーショコラの通販サイトを開設したところ、そこからたくさん売れるようになります。
ガトーショコラの安売りをやめる
最初はガトーショコラ自体で儲けようと思っていたなかったため、ガトーショコラは、1本500gで1,300円という価格だったそうです。
しかし、ガトーショコラで利益を上げていくなら、しっかり利益が出る適切な価格に設定しなければ、とサイズを半分にしたり、さらなる値上げを行って、現在の1本3,000円の価格にたどり着いたようです。
最初の安い価格を知っている方は離れていってしまうこともあったそうですが、それ以上に新規顧客を開拓することに力を入れて、うまく受け入れられていったのだとか。
「1本3,000円もするなら、さぞかし良いものに違いない」と新規顧客には価格のインパクトもあったのかもしれません。
さらに、価格を上げることでパッケージや材料にもさらにお金をかけることができ、商品の質を高めていったこともブランド価値を高めることにつながっていったんでしょうね。
「ランチ」をやめる
主力商品としてガトーショコラに絞り込んだ後は、お昼に営業していたランチ・喫茶もやめてしまい、レストラン「ケンズカフェ」は「ケンズカフェ東京」と名前を変え、本格的にレストランからガトーショコラ専門の洋菓子店へと変貌を遂げます。
「宴会」もやめる
ついには、「宴会」の受注もやめて、完全にガトーショコラ1本で行くことに舵を切ったそうです。スペースができてガトーショコラの箱をたくさん置くことができるという物理的なメリットもあったそうですが、本格的にガトーショコラのファンを増やすことだけに注力すればいい状態になったわけです。
「ネット通販」もやめる
ここで終わらないのがスゴイと思いました。ガトーショコラ一本に集中する、ところまではまあ分かるんですが、そのガトーショコラの販売においてもこれまでやっていたネット通販をやめ、店頭販売のみにしぼってしまうんですね。
普通は、ネットを使って全国のお客さんに対して売っていこうとスケールするのが当然の当たり前の路線に思えますよね。この時点で売上の7割はネット通販だったというので、なかなかできない決断ですよ。
ところが、ネット通販をやることで発生するクレームやトラブルの対応で消耗する現実を目の当たりにし、ネット通販はやめ、店頭での販売のみに絞ります。
これで売上が落ちると思いきや、逆に「店舗でしか買えない」点が希少性・ブランド価値を上げ、売上はさらに伸びていったそうです。
「余計なこと」をやめて、プロモーションに注力
さて、マーケティング用語で「4P」というのがあり、これはプロダクト、プライス、プレイス、プロモーションのことを指し、これら4つのPを組み合わせながら展開していくのがマーケティングの基本なんだそうです。
しかし、氏家さんはこのうち「プロダクト」、「プライス」、「プレイス」を「余計なもの」として見直し、プロモーションに注力していくという戦略を取ります。
・「プロダクト」=「ガトーショコラ」1サイズのみ
・「プライス」=「3,000円」の商品1サイズのみ、しっかり利益の出る価格
・「プレイス」=「新宿御苑」の1店舗のみ
ほかの3つを徹底的に絞り込んだのであとは、それをプロモーションするだけです。使える力はすべてプロモーションに注ぐのみです。
その後、「ケンズカフェ東京」がどのようにしてさらなる飛躍を実現していったか、そのプロモーション手法についても、3章以降に具体的に紹介されています。
こちらはぜひ本書を手にとって読んでみてください。
読むと「勇気が湧いてくる」。
以上、11月26日に発売となった「余計なことはやめなさい! ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方」の紹介および、実際にぼくが読んだ感想でした。
ぼく自身はお店をやっているわけではないですが、氏家さんの話を知ると、自分にとっての「余計なこと」を見極めて、徹底的に絞り込んだものに注力していくことで、もっと成果を挙げられるんじゃないか、と勇気が湧いてくる本でした。
なにかをやめる、というのはなかなか勇気のいることですからね。氏家さんのことばは、それを後押ししてくれそうです。
今まさに、目の前に課題が立ちはだかっている、という方にはオススメの一冊です。
実際に3,000円の「特撰ガトーショコラ」たべてみた
今回記事を書く機会に際し、ケンズカフェ東京さんから、書籍に加えて「特撰ガトーショコラ」を1点頂いたので食べてみました。
食べる前は、1本3,000円でこのサイズ、やはり高いかも!?とは思ったのですが、食べてみるとその価格に納得。
余裕で3,000円を出せる商品でした。これはおいしい。
とても濃厚で、一度にそんなにたくさんは食べられないと思います。厚めに切ったら1切れでも十分かも。
冷やしても、常温でも、電子レンジで温めて食べるのも良いそうですが、ぼくは電子レンジで少し温めるのが気に入りました。一部がトロっと溶けてフォンダンショコラのような食感になるのもまた良いです。ジューシーでとろける味わい。
はじめて食べたのですが、気に入ってしまったので池袋東武の全国銘菓撰にて自腹で追加購入してしまったほど。
手土産として利用する男性客が多い、と本書にも書いてあったんですが、すごくわかる。持っていきたい。よろこばれたい。
いや、これもらったらスゴイうれしいですよ。
ちなみに、新宿御苑のお店での予約はなかなか難しいようですが、松屋銀座、池袋東武なら店頭販売もワンチャンあるみたいなので、どうしても、という方はそちらを狙ってみてください!
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